皇帝陛下、今宵あなたを殺害いたします―復讐するのに溺愛しないでください―【コミカライズ原作】
―― ⋯⋯はいるぞ。
言葉と同時にドアが開き、兄さんが容赦なく部屋のなかに入ってきた。
「ほら、起きてる」
私のほうが一瞬隠れるのが遅くなってしまった。けれども諦めの悪い私は毛布を被って背中を向ける。
そこで顔を出せるほど素直ではない。
「⋯⋯怒ってるか?」
「――――」
「⋯⋯ごめんな。いきなりで悪いとは思ってるんだが――」
謝罪なんて今更聞きたくない。
「違うから。今はひとりにして」
近づいてきた床の軋む音にピシャリと告げる。止まった足音を感じながら、毛布の中でギュッと目を閉じた。
謝るくらいなら、最初からいわないでよ。
兄さんはどんな気持ちで、舞踏会に行けと言ったんだろう。
私たちはとても仲のいい兄妹だけれど、ひとつだけ相容れない部分がある。
それが父の事件についてだ。