皇帝陛下、今宵あなたを殺害いたします―復讐するのに溺愛しないでください―【コミカライズ原作】
「アイリス⋯⋯」
まるで、幽霊でも見ているような顔で私のことを見て驚いている。
けれども、今はそんなことを指摘している場合ではない。
「⋯⋯なんで、怪我をしてるの」
「おかえり」や「大丈夫」よりも先に、焦ったように突いて出てしまった。
つるりとした額から頭部にかけて白い包帯が丁寧ぐるりと回され、前頭部の左側からは深紅がにじんでいる。
傷口は見えないけれど、明らかにかすり傷とは言い難い。
黙っていられず、頭ふたつぶん大きなルイナードの前にちんまりと立ちはだかると、彼は即座に視線から逃げるように、ふいと顔を背けてしまった。
「⋯⋯なんともない、気にするな」
――そんなわけ
開きかけたそのとき。突然、割り込むように大きな体が、私たちの間にずいずいと入りこんできた。
「ちょうど、良かったです、アイリスさま。お忙しいところ申し訳ありませんが、陛下をお部屋の方へ連れていっていただけますでしょうか?」
「――え?」
思わぬクロードさんのお願いにキョトンとする。