皇帝陛下、今宵あなたを殺害いたします―復讐するのに溺愛しないでください―【コミカライズ原作】
「クロード⋯⋯俺は公務が――」
「この通り、公務へ向おうとしているのですが、大事に至ってはならないと思い、医師の診察を受けていただきたいのです。アイリスさまが同行してくださると、私の方も嬉しいのですが」
口挟むルイナードを構わず、クロードさんはさらに私へと詰め寄る。
確かにこの状況であれば、念の為ハリス先生の診察をを受けてからのほうがいいに、決まっているし。彼一人で向かわせれば、ふらりと公務に戻るのも目に見えている。
どこか落ち着かなそうなルイナードを、ちらりと確認しつつ⋯⋯
「わかったわ」
仕方なく了承すると、クロードさんは「――ありがとうございます!」と喜び、その背後では、大きなため息が聞こえてきた。
その後すぐに、仕事へ向かう二人と別れ、私はルイナードを部屋へと連れて行った。
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部屋に到着すると、すでにハリス先生が診察の準備をして待ち構えていた。
すぐさま診察は開始する
傷の状態を確認しておきたい私は、邪魔にならないよう先生の背後にて、その様子をじっと見守っていた。
しかし。何の心構えもしていなかった私は。
甘かったのかもしれない。
ルイナードの視界を邪魔していた包帯が、ゆっくりと解き放たれた、その瞬間。
呼吸ができなくなるかと思った。
ぷるぷると震える手で口元を覆い、ショックのあまり、“どうして”という悲しみに心が支配されてしまう。