皇帝陛下、今宵あなたを殺害いたします―復讐するのに溺愛しないでください―【コミカライズ原作】
連日押し寄せる橋梁工事へのデモは、日に日に悪化の一途をたどっていたようだ。
はじめのうちは、押し寄せる程度で済んでいた組織は、しだいに職人たちへと圧をかけるようになり、しまいには、橋を占拠するといった強硬手段に出ようとした模様。
「だから、今回は俺が自ら出向いて彼らと話し合う決意をしたのだが―――」
ところが、いざルイナードが「話し合いをしたい」と現地に駆けつけたところ、突然の皇帝の訪問に驚き、一時霧散してしまったようだ。
それもそのはず。お父さまの襲われたあの事件から、帝国中から大きなバッシングを受けるようになった組織は、現在では三百名ほどの小さな組織。
聞いた話だと、こちら側からは、五百以上の皇帝騎士団が向かったとのこと。さらには皇帝直々に現れたものだから、武力を持たない彼らは、怖じけづいて逃げてしまったのだろう。
とはいえ、再来が危惧されることから、帰還するわけにもいかず、一団は滞っていた工事過程を手伝いながらその場で待機することとなったそうだ。
そして、基礎工事の視察をしている最中、酒の入った瓶が左方向から投げ込まれたらしい。
『――陛下!!』
咄嗟のことに、自らはもちろんのこと、側で護衛していたカルム団長も、間に合わなかったようで
「――まぁ、幸い頭部にしていた防具に当たったことで、大事には至らなかった。ガラスの破片による傷に、少しばかり悩まされただけだ」
「――充分、一大事ですよ。陛下」
ことなき事を強調するルイナードを、やんわりとハリス先生がたしなめる。