皇帝陛下、今宵あなたを殺害いたします―復讐するのに溺愛しないでください―【コミカライズ原作】
「ちょっと、服⋯⋯」
そんな誤魔化しは通用せず、そのままギシリ⋯⋯とソファに膝をのせ
「言うことを聞かない民を捕らえるか? 罰するか? それとも――」
背もたれに縋り付く私を、しなやかな両腕の檻が囲って
「――殺すのか?」
鼻先の触れ合う距離から、黄金色が刃物のように貫く。
息が止まるかと思った。
おそらく、試しているのだろう。しかし、いつも以上に真剣で。氷点下の声色はここに来てにはじめて向けられるもので。身がすくんで動けなくなる。
私はその目に囚われたまま「いいえ」とか細く否定するのが精一杯だった。
なぜこんなに⋯⋯悲しそうなのだろう。
直後、フッと弱々しい笑みを浮かべた彼は、思いの外あっけなく身体を離し、隣に身体を沈ませる。
「――お前の言いたいこともわからないでもない。しかし、気に入らないからと言って、手を上げれば⋯⋯以前の皇帝一族と同様となる。⋯⋯俺は、“もう”血を流すような行為は⋯⋯したくない」
“もう”⋯⋯?
グランティエ家の前は、とてもひどい皇帝一族だったと、帝国内では有名な話だ。
かと言って、私はそこまでの重みを含んでいったわけでは無いのに。
でも、どうしてなのか⋯⋯そう宣言するルイナードの横顔は、なぜだか懺悔にも似たものが滲み出ていて。
目が離せなかった。