皇帝陛下、今宵あなたを殺害いたします―復讐するのに溺愛しないでください―【コミカライズ原作】
「皇妃として、覚えておけアイリス。――俺は、前皇帝たちよりも、さらに、平和な世にしていきたい」
「⋯⋯えぇ」
私を定める瞳からは、異論は認めないといった、強い信念のようなものを感じる。
平和なヴァルフィエ帝国を築いてきた、皇帝一族のプライドなのだろうか。
帝国と。民と。そして組織と。それらと向き合おうとする真摯な姿。彼の理想とする帝国像は、とても素晴らしいと思う。けれども、その一方で。その優しさが⋯⋯
彼自身を大きく痛めつけたら、どうしようと、言いようのない不安に駆られる。
何事も無く、デモが収まるといいんだけど⋯⋯。
「なんだ。そんなに俺の顔を見て」
ハッとした。
思い悩むあまり、ルイナードの顔をじっと見つめていたようだ。
「なんでもないわよ」
逃げるように俯くと、頬に寄せられた大きな手に無理やり視線を合わされる。
「⋯⋯そんなわけあるか。今日のお前はやけに大人しい。出迎えたり、部屋までついきたり、こうして話す時間を設けたり。⋯⋯寂しかったのか?」
見透かしたような黄金色がニヤリと細められると、途端に心臓がバクバクと暴れ出す。