皇帝陛下、今宵あなたを殺害いたします―復讐するのに溺愛しないでください―【コミカライズ原作】
――家族になれるかもしれない。
そう思うと同時に、私は駆り立てられるように、彼の手を掴んで引き止める。
「――ルイナード、ちょっと話を――」
「――そろそろ、クロードのところへ行かなければならないな」
急に、表情を引き締めたルイナードの温もりがスッと離れていく。
今まであんなに優しい表情を浮かべていたのに、それは、あまりにも唐突で、とても不自然に感じた。
「⋯⋯傷は大丈夫なの?」
気のせいだろうか。
「――問題ない。お前もそろそろ自室へ戻れ。⋯⋯話しは後日ゆっくり聞いてやる」
早々と会話を切り上げた背中は、それまでの優しい時間が嘘のように、素っ気なくクロードさんの元へと向かってしまった。
私はバカみたいに、ぼんやりとその場に立ちつくしていた。
“後日ゆっくり聞いてやる”
なんとなく、その日が訪れることは、ないような気がした――。