皇帝陛下、今宵あなたを殺害いたします―復讐するのに溺愛しないでください―【コミカライズ原作】
「⋯⋯何を考えているのかなんて、わからないわ。私を避けるということは、“聞かれたら困る”ことがあるからなんだろうけれど」
真実が知りたい。日に日にその気持ちは譲れないものとなっていた。
過去の一件は、なにかの間違いなのではないか。もはやわたしの心中はそれ一色。
「――でも、彼は何かを隠している。これは私の勘だけど」
「最近のアイリスさまはとても、お強くなられましたね」
「別にそんなこと――」
真上から、サリーが短い髪を揺らしてニッコリと笑顔をみせる。
「ありますよ。サリーは、お城に来てから見守ってきましたが、今のアイリスさまは、ようやく道筋が見えてきたかのようにも思えます」
道筋⋯⋯か。
確かに、ここに来た頃の私は、ルイナードを憎むことに頭が占められていた。
「アイリスさま、サリーがはじめに言ったことを覚えておりますか?」
一瞬頭をめぐらして、すぐに思い出した。
「⋯⋯えぇ、覚えてるわ」
『ここでともに過ごせば、きっといつか――すべての疑問が解決するときがくるでしょう』
「――疑問は解決していないけれど⋯⋯考え方は、変わってきたかもしれないわね」
“真実”が知りたい――。そう思えるようになったのは、私にとって人生を揺るがす大きな変化だ。
ルイナードを取り囲む“矛盾”の奥には、“真実”が眠っていると思いたいから。
髪を丁寧に流し終えたサリーは、私を起こしてふわふわのタオルを被せてくれた。そのまま髪を包みこみながら、さらに言葉を重ねる。