皇帝陛下、今宵あなたを殺害いたします―復讐するのに溺愛しないでください―【コミカライズ原作】
「――えぇ、雨漏り⋯⋯?」
湯汲みを終えてサリーと私室に戻ると、就寝の準備をしてくれていた侍女が困ったように事態を打ち明けた。
「はい。ベッドを整えていましたら、天蓋から雫がしたたっていたようで、寝具が濡れてしまわれまして⋯⋯」
「まぁ⋯⋯それは大変。困ったわねぇ」
困り果てた声をあげたのは、サリーだ。若干頬が緩んでいるように見えるのは、不測の事態によほど動揺でもしているのだろう。
激しい雨が窓ガラスを打ち付け、バラバラと唸る。
ヴァルフィエの夏季は、夜になると発達した低気圧が押し寄せ、短時間の豪雨に見舞われることが度々ある。
まぁ――⋯⋯雨漏りは予想外だけれども。