皇帝陛下、今宵あなたを殺害いたします―復讐するのに溺愛しないでください―【コミカライズ原作】

ぎこちなく紡がれていくルイナードの言葉に、これまでの不安や小さな疑問たちが、洗い流されていくのがわかった。

小川のせせらぎのように、清らかに。綺麗に。

涙でゆらめき、ルイナードのふたつの瞳がダイヤモンドのようにキラキラ輝く。

感極まって、口を開けない。


「――剣を放棄するなら、なおさら俺と共にいろ」


返事をする間もなく、彼の長い睫毛が近づき、柔らかに唇が被せられる。

考える時間なんて必要なかった。いとも自然な流れであるかのように、私は目を閉じて受け入れる。


これを拒めない理由なんて、もう、ひとつしかない。


――私は、今、ようやく、気づいた


この十年間、必死に心に鍵をかけて、ルイナードから遠ざかっていた。

けれども、その一方で、大きな喪失感に似たナニカを感じていたのも事実で。

彼を問いただしているうちに、その正体に気づいてしまったの。

幼い頃から共に過ごし、同じものを見て、違うものを感じ、そして互いの成長を喜んできた最も大切な、愛しい人(ルイナード)を。


憎んでいるわけなかった。

嫌いになれるわけがなかった。


あの事件の夜、突き放されたところで。

彼が、お父さまを殺しただなんて、本気で思えるわけがなかったんだ⋯⋯。

< 217 / 305 >

この作品をシェア

pagetop