皇帝陛下、今宵あなたを殺害いたします―復讐するのに溺愛しないでください―【コミカライズ原作】
ぎこちなく紡がれていくルイナードの言葉に、これまでの不安や小さな疑問たちが、洗い流されていくのがわかった。
小川のせせらぎのように、清らかに。綺麗に。
涙でゆらめき、ルイナードのふたつの瞳がダイヤモンドのようにキラキラ輝く。
感極まって、口を開けない。
「――剣を放棄するなら、なおさら俺と共にいろ」
返事をする間もなく、彼の長い睫毛が近づき、柔らかに唇が被せられる。
考える時間なんて必要なかった。いとも自然な流れであるかのように、私は目を閉じて受け入れる。
これを拒めない理由なんて、もう、ひとつしかない。
――私は、今、ようやく、気づいた
この十年間、必死に心に鍵をかけて、ルイナードから遠ざかっていた。
けれども、その一方で、大きな喪失感に似たナニカを感じていたのも事実で。
彼を問いただしているうちに、その正体に気づいてしまったの。
幼い頃から共に過ごし、同じものを見て、違うものを感じ、そして互いの成長を喜んできた最も大切な、愛しい人を。
憎んでいるわけなかった。
嫌いになれるわけがなかった。
あの事件の夜、突き放されたところで。
彼が、お父さまを殺しただなんて、本気で思えるわけがなかったんだ⋯⋯。