皇帝陛下、今宵あなたを殺害いたします―復讐するのに溺愛しないでください―【コミカライズ原作】
なら、なぜそうなったの?
彼の唇の温度を感じながら、何度も、何度も、自問自答を繰り返した。
そして今、ようやく気づいた。
それはたぶん。
あの惨劇の中、最も心をえぐる形で、私を突き放したルイナードを⋯⋯。
許すことが出来なかっただけだ。
一番に抱きしめて欲しいときに。
そばにいてほしいときに。
私を捨てた彼が許せなかった。
そんな、私は愛情と憎しみの内情を、自分のいいように履き違えて。
十年間、彼を憎んでいると、偽ってきただけったんだ。
きっと兄さんも、それを見抜いていたんだ。
――私は、ずっと、ルイナードが大好きだったんだ。
そう悟った瞬間。言いようのない思いが込上げて、たちまち涙が溢れる。
「泣くな⋯⋯口付けが塩の味がする」
「⋯⋯ルイナードのせいよ」
「俺のせいではない。俺はお前に囃し立てられて、思いを告げただけだ。人を試すなんて、悪いやつだ」
申し訳ない気持ちになって、ちらりと見上げると。陶器のように滑らかな頬が、ふわりと綻んでいた。怒ってないみたい。