皇帝陛下、今宵あなたを殺害いたします―復讐するのに溺愛しないでください―【コミカライズ原作】
「もう少し⋯⋯待て」
「⋯⋯え?」
唐突な命令にキョトンとすると、彼は困ったように微笑んだ。
「お前に逃げられたら困る⋯⋯。だから、俺の決意が固まるまで、もう少しだけ待て」
“あの日のこと”。教えてくれる気になったんだ。
心に日差しが差し込んだかのように、瞬時に嬉しい気持ちに満たされる。
でも残念ながら“待て”はあまり得意ではない。
「大人しく⋯⋯待っていられるかはわからないけど」
「あぁ。それでいい。共にいれば、それで」
たまらない気持ちになった私は、彼の首にギュッと両腕を巻き付けて首筋に顔をうずめる。
すかさず背中を支えた大きな手がゆっくりと上下する。
大好きよ、ルイナード。
でも、まだ口にできないのは、私が臆病だからだ。
「覚えておけ⋯⋯アイリス。全てはお前だから、はじまったんだ。逃げようとも、もう俺はお前たちを、手放せない」
“たち”
私たちは、家族になれるんだ。
うっとりしながら頷くと、それを合図に、腕の中で身動ぎをしたルイナードは、突然、私の身体をひょいと持ち上げてしまった。