皇帝陛下、今宵あなたを殺害いたします―復讐するのに溺愛しないでください―【コミカライズ原作】
『⋯⋯眠るの?』
『あぁ、今日からは毎日こうして眠る。本音を言えば抱きたいが⋯⋯お前に不安を残したまま抱くのは、意に反するからな』
自分だけしっかり羽毛の枕に頭を埋めたルイナードは、偉そうにそんなことを言ってみせる。
ちょっぴり残念な気持ちになってしまったのは秘密だ。
『舞踏会のときに騙したのに、そんなこと言う?』
『⋯⋯それしかお前を手にする方法が、浮かばなかった』
不服そうに言いながらも、その後、彼が与えてくれた口づけは、とろけそうなほど甘くて何も考えられなくなってしまった。
その日から、私たちはふたりの寝室で甘い時間を過ごしている。
4階に降りて、目的地を目指していると、前方から長髪の白衣の紳士の姿がやってきた。
「ハリス先生!」
すっかり親しくなった先生との遭遇に嬉しくなった私は、笑顔で手をふった。
「ごきげんよう、アイリスさま。書庫で自学でございますか?」
先生は私の前で足を止めると、片手に分厚い書類を抱えたまま、丁寧な所作で腰を折る。
「先生は調べもの?」
「薬草に関する本を拝借してきました。これから薬師たちと薬学に関する打ち合わせがあるので」
そう言って『薬草図鑑』を見せてくれた先生は紳士的な笑みを携えて「では」と丁寧に一礼して去っていく。
今日は、いつになく忙しそうだ。