皇帝陛下、今宵あなたを殺害いたします―復讐するのに溺愛しないでください―【コミカライズ原作】
そのままの足取りで書庫へやってきた私は、“ヴァルフィエの歴書”が敷き詰められる棚の前で、本の吟味をしていた。
平和なヴァルフィエで起こった、大事件ともいえる十年前の皇城襲撃事件。皇帝一族と、反する組織との対立に関する資料は、ひとつの棚を埋め尽くすほどふんだんにある。
私はいつものように、気になるものをパラパラめくり、めぼしいものを数冊抱えて、読書コーナーへと向かった。
「⋯⋯あれ?」
そこで、ソファに腰を下ろしかけたとき、磨かれた床に何かが落ちているのを見つけてしまった。
拾い上げた私は、思わず目をパチクリ。
――『Ruinâdo Gurantjie medical chart 』
ルイナードのカルテ。さっきまでここを使用していた、ハリス先生の忘れ物だろうか?
分厚いノートはギッシリ使い込まれている。おそらくルイナードの身体記録が事細やかに書かれているんだろう。
その瞬間、ハッと思い返す。
もしかして――傷跡のこと載ってる?
本来であれば、個人情報を盗み見るのはよくないけれど⋯⋯
でも⋯⋯
ノートを手にして、思い悩んでいた
そのとき。