皇帝陛下、今宵あなたを殺害いたします―復讐するのに溺愛しないでください―【コミカライズ原作】

「ルイナードが、事件のことを何も話してくれないから⋯⋯自分でも調べてみようと思ったの。何か隠していると思ったら、黙ってられなくて」


早口で言い訳を重ねると、クロードさんは、私をソファへと気遣ってから静かに微笑む。


「そうですか。わたくしも嬉しい限りです」

「クロードさんは、ルイナードから昔のこと、何か聞いてるの⋯⋯?」


かすかな希望を持って問いかける。

どの資料を見ても『皇帝の命を狙った事件』『死亡者1名』、情報はそれだけ。本当のことを言えば、お手上げ状態だった。

彼ほど信頼関係を築けている人なら⋯⋯と思うものの。クロードさんは困ったように微笑む。


「⋯⋯我々が聞いても、陛下は“自らは”何も言いませんよ。あれは異例なる事件だったために、当時に関する記録も、厳重な管理下にあります。陛下の許可がないと入れないので、今のアイリスさまが入るには、難しいでしょう」

「そう⋯⋯」


イコール、ここでどれだけ調べても、情報は出てこない、ということだ。

落胆を隠せないでいると、クロードさんは室内をなんとなしに歩みながら、私を気遣う。


「しかし――ジャドレさまは陛下へと我が子のように愛情を注ぎ、陛下からはジャドレさまに対する、揺るがない親愛が見えました。私の見てきた陛下は、そんな方を手に掛けるようなお人柄ではありません。アイリスさまも、そう思い替えたからこそ、こうして過去へ足を踏み入れているのではないですか?」

「えぇ、そうね」

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