皇帝陛下、今宵あなたを殺害いたします―復讐するのに溺愛しないでください―【コミカライズ原作】
同意する一方、ふと気づいた。
“記録”がある。というのとは、ルイナードが語らずとも知り得る人間はいるということだ。もちろん、一番そばで使える、クロードさんも。彼は“知らない”とは言わなかった。
だとしても、柔和な笑顔の下は、カルム団長と同等に忠誠心が強い。絶対に教えてはくれないだろう。
「あなた方のお心が、本当の意味で通じ合う日を、心待ちにしております。アイリスさまが城を去ったあとの陛下は、怪我もありますが、食事もままならず、見ていられない状態でしたから」
「――怪我?」
続けられる情報の中に、引っかかりを感じた。反応した瞬間、クロードさんは急に腕時計を確認して。
「おや。もう、こんな時間ですね」
疑問をそのままに、そそくさと書庫を去ってしまった。
その様子は、どことなく焦っているようにも見えた。
――怪我?
よぎるのは、鍛え抜かれたルイナードの胸元に刻まれた刺されたような傷跡。
もしかして⋯⋯あの傷は10年前についたもの?
そこで、迷わず、さきほど隠した、ハリス先生の忘れ物――
『Ruinâdo Gurantjie medical chart 』を本の間から引き抜いた。
なんて、いいところに落ちていたのかしら。まるで、仕組まれているみたい。
私は「ごめんなさい」と手を合わせながら、藁にもすがる想いでノートを開く。