皇帝陛下、今宵あなたを殺害いたします―復讐するのに溺愛しないでください―【コミカライズ原作】
私は、静まり返る部屋の中で、右上がりの文字を読み勧めた。
紙の触れ合う音がやけに大きく響き渡り。
ページをめくる手が止まらない。
ひらすら探し。ひたすら文字を読み進める。
そして――
「――どういうこと⋯⋯?」
私の脳内で、新たなる疑問が浮上した。
「――失礼します」
そのときだった。ノックも無しに、大きな白い人影が静かに入室してきた。
全意識がノートに集中していた私はカルテを隠す余裕もなく⋯⋯
「ハリス⋯⋯先生」
私は目を剥いたまま、ノートを手にしたまま、ゆっくりとした足取りで近づいてくるハリス先生から、目を反らせなかった。
「アイリスさま、それを、見てしまわれましたか?」
どうしよう。今更取り繕ったところで、仕方ないし。
「ごめんなさい、下におちていて――」
「拾っていただきありがとうございます。どうやら忘れてしまったようでして。お読みになっていたようですが、お返しくださいますか? 陛下の情報は機密情報となるものですから」
目の前にやってきた先生は、ニッコリと微笑んで、深々と頭を下げて申し出る。
やけに輝かしい笑顔を見ていて、ほんのり不自然なものを感じた。
“忘れた”? 本当に⋯⋯?