皇帝陛下、今宵あなたを殺害いたします―復讐するのに溺愛しないでください―【コミカライズ原作】
水路沿いをゆったりと突き進み、やがて、ガゼボに行き着いた私たちは、舞踏会の夜のように並んで腰をおろした。
「あの夜を思い出すな⋯⋯」
夜の美しい庭園の風景に視線を走らせながら、彼も同じことを考えていたらしい。
指先に重ねてきた大きな手を、そっと握った。
「まさか、あなたが目の色を変えていて、お持ち帰りされるとは思わなかったけど」
「⋯⋯お前も、俺に好意があっただろう。俺とのダンスを断らなかった」
確かにその通り。けれども、平然と言いきってしまう彼がなんとも憎たらしい。
「⋯⋯断ってたら、どうしてたの?」
試すように、夜空の映り込む黄金色を覗き込むと、ルイナードは一瞬目を見張ったあと、小さく息を落とした。
「⋯⋯お前はずるいな。自分の気持ちは言わないくせに、俺の腹の中は暴こうとするのか」
「⋯⋯暴いちゃ、だめ?」
ずるいのはルイナードも同じだ。まだその唇から“真実”が語られていないもの。だからおあいこ。
挑むように、視線だけルイナードの顔を見上げると、彼はかすかに息を飲む。