皇帝陛下、今宵あなたを殺害いたします―復讐するのに溺愛しないでください―【コミカライズ原作】
「⋯⋯俺にはお前しかいないと言っただろう。断られたら、頷くまで口説いていた」
「⋯⋯うん」
「アイリスを、この国のお姫さまにすると言っただろう」
「覚えてたの⋯⋯?」
まさか、覚えているとは思わず、今度はこちらのほうが打ち負かされた気分となってしまう。
お月様よりも光り輝く瞳が、私を愛しげに見つめる。
ルイナードは、いつも、ひとつひとつの思い出に、大切に、慈しむように、触れてくれるの。
嬉しいのに、心が掴まれたように、切なく痛む。
ちらりと、あのカルテの情報が頭をよぎる。
この、キラキラした瞳に、何か問題があるようには、私にはとても見えない。
「そんな顔されると、耐えられなくなる」
長い指先が蜂蜜色の髪の中に潜ると同時に、
優しく緩められた黄金色を瞼の下に隠し、艶のある黒髪と、通った鼻筋が近づいてきた。
あぁ。どうしようもなく、彼が好き。
そう心で唱えた瞬間――ふわりと優しいぬくもりが重ねられて、言葉を交わすことのない甘いひとときが訪れる。
この瞬間はいつも、愛しさが募り、口から感情が飛びててきてしまいそうになる。