皇帝陛下、今宵あなたを殺害いたします―復讐するのに溺愛しないでください―【コミカライズ原作】
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「⋯⋯アイリスさま。サリーは知りませんよ。陛下が、お怒りになるような気がするのですが⋯⋯」
意気込んでから、三日後の昼下り。天気は雲ひとつない快晴。
庭園の芝生の上にテーブルセットとカウンターを広げ、ティータイムの準備をしてくれたサリーは、心配そうな面持ちを向けてきた。
「もう。そんなことで怒らないわよ。それに、思い当たるのは彼しかいないじゃない」
秋季らしく淡いブラウンのワンピースに身を包んだ私は、今からとある人物とここで合う約束をしている。
「⋯⋯以前いらしたときの陛下、報告してからすぐに、アイリスさまの部屋にすっ飛んでったんですから⋯⋯」
テーブルに花瓶を飾っている背後で、ボソボソ何か聞こえる。
「え? なに?」
「いえ。なんでもありませーん」
先日、決意を語ってから、サリーはずっとこんな状態で、ルイナードの顔色ばかりを気にしている。
そうは言っても、ルイナードたちが帰還しているわけではない。彼らは未だヘリオンスに滞在中だ。
ネスカの先にあるヘリオンスまでは馬での移動で約ニ日ほどの距離。そろそろ到着して、何らかの話し合いが行われている頃だろう。
電報での報告は、まだ届いていないと、昨夜クロードさんは言っていた。
先日のひたいの怪我を思うと、心配は募るけれども。
私自身も、今日は、過去の真相を確かめるための、大切な日でもある。