皇帝陛下、今宵あなたを殺害いたします―復讐するのに溺愛しないでください―【コミカライズ原作】
――『陛下の交友関係』
ハリス先生は随分と親切だ。
きっと、彼なら、何か知っている。
確信めいた感情を再確認していた、そのときだった。
「あぁーーあ、思ったとおり。すっかり、恋する乙女になっちゃってさ」
少しだけ茶化すような、ちょっぴり不服そうな声が、背後から聞こえてきて、すかさず振り向く。
「久しぶり、マーシー」
庭園の木々の間から、王子様のような甘いマスクがにこやかに姿を現す。
ブラウンの緩やかなくせ毛。チョコレート色の大きな瞳。
白シャツにグリーンのベストを羽織り、その下にはモカ色のトラウザーズ。彼にしてみればラフな格好だ。
そして脱いだジャケットを手にしている彼は、やがて私の前で磨かれた革の靴を止めた。
「久しぶり、アイリス⋯⋯」
「突然、呼び出して、ごめんなさい」
「いや、僕の方こそ⋯⋯手紙、なかなか返せなくてごめんね」
軽く頭を下げると、社交界の貴公子は久々の再会に、困ったように笑った。