皇帝陛下、今宵あなたを殺害いたします―復讐するのに溺愛しないでください―【コミカライズ原作】
幼い頃から、ルイナードとマーシーはやたら張り合う事が多かった。
抱えきれない花を二人から手渡されたり。どちらが私に勉学を教えるか口論になったり。
競い合ってはいるけれど、いがみ合ってはいない。まさに、そんな言葉が似合うふたりだ。
幼かった私は、月に一度のそんな賑やかな日が楽しみで、3人で過ごした時間も、また宝物のようにキラキラと輝いた時間だった。
「マーシーが来てくれた時間は、とても充実していたわ。書庫で勉強するときだって、わからないことがあれば、いつも丁寧に優しく教えてくれたのはマーシーよ」
どちらかと言うと、無口なルイナードよりもマーシーとのほうが話すことも多く、ルイナードのほうが不貞腐れていたと、記憶している。
それの、一体何が羨ましいというのだろう?
「アイリスは自覚無いかもしれないけど、君が本当に助けを必要とするときに、求めるのはルイナードなんだ。ルイナードの方も、ちゃんと君のことをいつも見ていて、言葉にする前にそれに気付く。そんな信頼し合っていた関係が羨ましかったんだ」
マーシーが悲しそうに笑う。
「どうあがいても、君の目に僕が映らないことがとても悔しかった」
マーシー⋯⋯。
確かに、ルイナードは助けを求める前に、いつも、先回りして手をかしてくれた。
言葉や態度にはしないけれど、そんな温かさと、たまに見せてくれるキュートな笑顔に、ずっと恋をしていた。