皇帝陛下、今宵あなたを殺害いたします―復讐するのに溺愛しないでください―【コミカライズ原作】
「マーシー、あなたは騙してなんかないわ」
あの日から、私の様子が落ち着くまで、彼は頻繁に我が家をおとずれて、兄さんと共に私を励ましてくれた。
それの、何を騙したというの?
そんな思いでまっすぐ見つめていると、マーシーは目を伏せて、すかさず首を振る。
「――騙したよ。ルイナードは、ロルシエ卿を殺してなんかいないんだ」
「――え」
どういうこと?
途端に胸が期待に膨れ上がるのを感じた。やっぱりマーシーは何かを知っている。
「⋯⋯僕が知っているのは、ルイナードの“隠し事”だけで、事件については、記録を見た限りほぼ想定通りだろう。でも僕は、それを知りながらも、アイリスをルイナードから引き離すことしか考えていなかった。引き離せば、いつか僕のことを見てくれるんじゃないかって思っててね。けど⋯⋯それは逆に悲しくなるだけだった」
嵌め込まれたブラウンの輝きが、懺悔に揺れる。
「ジャドレ卿を殺された。憎んでる。そう言いながらも、アイリスが自分でも気づかないところで、ルイナードを信じて、ルイナードに恋をしているのを⋯⋯僕はちゃんとわかっていた。
それなのに、アイリスに本当のことを伝えず、君の隣にいることを選んだんだ」
自分でも気づかなかった気持ちを見抜かれていたことに驚きながらも、私の思考はすでに先を見ていた。
心臓がドクドクと、狂おうしく高鳴る。
「マーシー⋯⋯その、本当のことって――」
そのときだった。