皇帝陛下、今宵あなたを殺害いたします―復讐するのに溺愛しないでください―【コミカライズ原作】
「アイリスさま⋯⋯? そろそろ行きますよ」
サリーの呼びかけで我に返った。どうやら彼を覗き込んだまま、ぼんやりしていたようだ。
「えぇ」と空返事をしながらも、離れがたい私は、もう一度ルイナードへと身をかがめた。
「ルイナード⋯⋯」
正直、奮い立たせている心は、今にも不安に押し潰されてしまいそうだ。
けれども、今、一番、頑張っているのはルイナードだから。
これが何日続こうとも、私は、信じて待つ。
だから。お願い。早く帰ってきて。
熱くなりそうな目頭をどうにか逃して、ルイナードの真っ白な頬を撫でる。
「⋯⋯目を覚ましたら、私も伝えたい事があるわ。明日も来るわね」
しかし、耳元で囁いて、ベッドサイドから離れようととした、そのときだった。
視界の端で、ピクリと扇のような睫毛が微かに揺れたような気がした。
「え⋯⋯?」
ピタリと足を止める。