皇帝陛下、今宵あなたを殺害いたします―復讐するのに溺愛しないでください―【コミカライズ原作】
信じられない思いで、なんとかベッドサイドにしがみついて、彼の頬に手を寄せる。
そんな私を見て、彼は小さく微笑む。
「⋯⋯アイリス」
白魚のような指先が、こちらに伸びてきて。いつものように、涙を払ってくれる。
まだ力は弱々しい。でも、それでも存在を思い知るには充分だった。
夢ではない。
温かい体温も。低くて甘い声も。優しい笑顔も。
ルイナードだ⋯⋯。ルイナードが目を覚ました。
「⋯⋯泣くな」
「⋯⋯死にそうになったくせに」
「⋯⋯まだ、死ねるわけ、ないだろ⋯⋯」
さらに目の奥がぐわーっと熱くなる。
その愛おしげな眼差しは確かに私に向けられていて、否応なしに、ぎこちない言葉の意味を理解させられる。
不安に押しつぶされそうだった。泣きたかった。
でも、そんな中で私を奮い立たせたのは、“今回こそは信じたい”という私の意地だ。
ルイナード、私は、あの頃に比べて、少しだけ成長できただろうか。
引き寄せられるがままに、ルイナードの肩口に顔を埋めて、子供のようにわんわん泣いた。
駆けつけたみんなが見守る中で、これまでの不安をぶつけるように。傷だらけの体をそっと抱きしめた。
もう、どこもいかないで⋯⋯。
――おかえりなさい。ルイナード。