皇帝陛下、今宵あなたを殺害いたします―復讐するのに溺愛しないでください―【コミカライズ原作】
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それからルイナードは順調に回復し、翌々週には城へ帰還することができた。

幸い後遺症などもなく、以前と同じように生活をできるようになってきたことから、ハリス先生が馬車での移動をようやく許可してくれたのだ。


『アイリスさまも、お待ちのようですし』


なんて言っちゃう先生は、たまにルイナードと一緒になって、少しだけ私に意地悪をするような技を覚えてきたようだ。

でも――


『やっと、帰れる。待たせたな、アイリス』

『もう、待ちくたびれたわよ⋯⋯』


誰もいない病室で、そんな甘いキスを交わしていたのは、秘密のこと。

私は、間違いなく、誰よりも彼の帰還を待ちわびていた。


そして、もちろんのこと、私たちの婚姻の式典は、彼の体が回復するまでの延期となっていた。

しばらくは公務の方も、クロードさんの厳重管理の元、極限まで留められることとなり、日取りの決定はだいぶ先のこととなりそうだ。


けれど、式典なんてもういつでもいいの。

大切なのは、彼がそばにいるという日常だ。


ルイナードを失いかけた出来事を通して、改めて彼への愛情を再確認していた。

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