皇帝陛下、今宵あなたを殺害いたします―復讐するのに溺愛しないでください―【コミカライズ原作】
――甘い。
とろけるように甘い口づけ。彼が帰還してからというものの、時間さえあればこうして交わされるようになった。
しかし、日に日に甘くなっていくルイナードにドキドキしながらも、私の方は、未だ彼に大切なことを伝ていない。
そして、彼からもまだ、大切な話しを聞けていない。
『アイリス。話しは、ルイナードから聞いて。きっと、君になら話してくれると思うよ』
ルイナードの退院の日。マーシーは別れ際にそう言い残して、晴れやかに帰って行った。
本当だろうか。
『帰還したとき、お前に俺の全てを捧げる』
確かにそうは言っていたけれども。あれ以来、話す素振りは全くないし。
そんな思考を溶かすほどのキスから解放したあと、ルイナードは唐突に切り出す。
「行きたい場所がある。少し散歩に付き合え」
「散歩? どこに?」
「いいから、何も言わずについてこい」
療養中の怪我人のくせに、相変わらずワガママは健在だ。
笑いながら立ち上がると、ルイナードは私にローブを羽織らせ、外へと連れ出してくれた。