皇帝陛下、今宵あなたを殺害いたします―復讐するのに溺愛しないでください―【コミカライズ原作】
秋の日差しが踊るように輝く庭園。
空は水のように澄み切り、ここのところ花壇の花たちはガラリと顔ぶれを変えていた。
こうして外に出るのは、退院の日以来かもしれない。
ふたりで水路沿いをまっすぐ進み、ガゼボを通り過ぎて、騎士団の訓練所のそばまでやってくる。
それでも、彼の歩みは止まることなく、さらに城の裏へと突き進み―――
やがて、私たちが辿り着いたのは、大きな十字架の前だ。
「しばらくぶりだな⋯⋯ジャドレ」
なんでここに⋯⋯
声を失う私をよそに、ルイナードは親しげに墓石とのやりとりを続ける。
「花がなくて悪い」とか「ここ最近は」とか。切り取られた日常の一部にも見える姿に、心臓が痛いほど掴まれた。
『陛下からはジャドレさまに対する、揺るがない親愛が見えました』
私が今まで目にしてきたのは、お墓の前に供えられる、少し萎れた淋しげな花。
こうして、ルイナードが訪れるのを目の当たりにして、一気に目頭が熱くなった。
ここには前皇帝陛下もお妃さまも眠っていらっしゃらないのに。
ずっと。私の代わり、手を合わせてくれていたんだろうか。
目が燃えるように熱くなって。ポロポロと涙が溢れてくる。
言葉にならない。
ありがとうとか、愛してるとか。それでは言い表しきれない、尊い気持ち。
彼のまっすぐな想いが、狂おしいほどに私を射止めて離さない。