皇帝陛下、今宵あなたを殺害いたします―復讐するのに溺愛しないでください―【コミカライズ原作】
グランティエ家に受け継がれる“黄金の瞳”は、希少で見目麗しいと称されてきたが、その反面、光に弱く、人よりも弱視であるという秘密があった。
父の話によると、自身は右側の視力が弱かったらしく。祖父に至っては両眼とも弱視だったようだ。ふたりとも眼鏡が手放せなかったと聞いている。
そして、俺の方は、右は一般的な視力を得ながらも、左は眼鏡ですらカバー出来ないほどの、いわゆる盲目に近い状態だった。
感じられるのは明暗のみで、常に神経を尖らせていらなければ、動きを察知するのは難しい。
アイリスといるときは気が抜けるのか、しばしば気づかないときがあった。ムクれたアイリスには「本の虫!」と怒られていたため、そういうことで話しを通させてもらっていた。
全ては、俺のプライドだった。
もとより病弱であったことから、これ以上周囲に迷惑をかけたくないという思いと。皇帝となる立場として、弱点を晒したくなかった。
『ルイナードは、問題ないか?』
一族の秘密について打ち開けてくれた父は、そう気遣ってくれたが
『俺は大丈夫だ』
咄嗟に隠してしまった過去を、今ではものすごく後悔をしている。
バレないように。気付かれないように。
アイリスにはもちろん、両親にさえも気づかれないよう、細心の注意を払いながら生きてきた。
俺だけの秘密。
しかし、十歳の頃に病弱だった母親を亡くし、立派な君主だった父が十六のときに流行りの病に侵されて亡くなった――十年前。
あの事件が起きた。