皇帝陛下、今宵あなたを殺害いたします―復讐するのに溺愛しないでください―【コミカライズ原作】
「ジャドレ⋯⋯怪我はないか?」
しかし、残る一人が崩れ落ち、ようやくホッと一息をついた。
その瞬間だった。
突如、切れていた左の視界から、大きな影が現れた。
あっ、と思ったときにはもう遅く。ドスンと激しい体当たりを胸に受けた。
一瞬何が起きたのか、全くわからなかった。
よろめいた身体を倒れぬように、ぐっと踏み留め。視線を落とすと、こちらに体重を預けていたのは、ジャドレだった。
その身体は、ズルズルと、床へと崩れ落ちていく。
時間が停止した。
なにが、おきた⋯⋯?
直後、自らの胸にもカッと燃えるような熱さを感じたが、荒波みにも似た感情に揉み消される。
糸の切れた人形のように、倒れていくジャドレ。
ドス黒くなる深紅の絨毯。
そして、前方にはさっき斬りつけたはずの敵が、血のついた大剣を構えて、薄ら笑いを浮かべていた。
その瞬間、頭は真っ白となった。