皇帝陛下、今宵あなたを殺害いたします―復讐するのに溺愛しないでください―【コミカライズ原作】
「あーあ、城がみえてきちゃったなー」
三十分ほど揺られた頃、時間に合わせて遠回りをしていた馬車は、本来の目的地に向かうため、城下街の大通りへと出た。暗い窓からは、一際存在感と威圧感を放つシルエットが覗く。
それを目にしたマーシーは、ちぇ―と唇を尖らせる。
ヴァルフィエ王国の首都中央にある、“皇城グランティエ”。
近世建て直された城は、現在の皇帝一族の名を取ってそう呼ばれている。
大昔要塞であった名残から断崖絶壁に成り立ち、帝国の中で最も美しいと称される建築物。近代的な構造である城内は芸術曲線で美しく、そして外には広大な庭園が広がっていることを、私は知っている。
そこで五歳から、八年間を過ごしたから。
「一緒に遊んだのが、懐かしいな」
「⋯⋯⋯⋯」
この城の庭園のどこかに、お父さまは眠っている。
兄さんは月に一度訪れるらしいけれど、私はまだ手を合わせたことがない。