皇帝陛下、今宵あなたを殺害いたします―復讐するのに溺愛しないでください―【コミカライズ原作】
だから、さようなら。アイリス。
『あなたが⋯⋯? ⋯⋯うそよ』
嘘ではない。
『気に食わなかったんだ。――使えぬ宰相など必要ない―――』
彼女の幸せを祈れば。自然と凍てついた心が広がっていた。
さらなる絶望を、嫌悪を、憎しみを受けて立ち去ればいい。
ジャドレが死んだのは、俺のせい他ならないから。
なにひとつ守れない。罪深い俺には“アイリス”という尊い存在など必要ない。そう思った。
悲鳴を上げながら執務室を後にした彼女と、後を追いかけたレイニーを見届けた後、俺の記憶はそこで途切れた。
『――陛下! 怪我してるではありませんか!!』
『クローど⋯⋯頼む⋯⋯アイリスを追ってくれ』
再びこのようなことが起きたとき、軟弱な俺は彼女をら守りきれる自信がなかった。
だから、この時、全て捨てた。
ジャドレの願いも。
アイリスへの想いも。
自らの痛みも。想いも。悲しみも。ぜんぶ。
アイリス=ロルシエを、この世の誰よりも愛しているから。
だから、この手を喜んで手離そう。