皇帝陛下、今宵あなたを殺害いたします―復讐するのに溺愛しないでください―【コミカライズ原作】
それからの十年は、いつだって過去の残像に縋るように生きていた。
大丈夫だと自身を奮い立たせながらも、
彼女のいない城の中は、がらんどうのようで
庭園の花畑は、ブルースターを視線で追っていて
たまに訪れる城下町では、どこか期待するように視線を配って
近侍には、内密にサザンメリーで花を買ってこいと命じたこともある。
そして、長年の止まっていた感情に、色彩を与えたのはあの瞬間だった。
『どうですか? 今宵のお相手に私などは?』
『⋯⋯はじめてなので、優しくリードしてくださるなら』
ここで断られたら、と内心震え上がっていた。しかし、彼女は戸惑いながらも俺の手を取ってくれた。
『大切に扱います。姫君』
もう、離せない――。
ここで自らの思いを思い知った俺は、その夜、連れ込んだゲストルームで小さな身体を組み敷き、浅ましい考えを持ち、なんども熱を注ぎ込んだ。
手段を選ばない自分に恐ろしささえ感じた。
そして、それは留まることを知らず、
『俺を殺す権利をやる』
彼女を傍に置けるのであれば、こんな約束など容易く、むしろ正しいことだとさえ思った。
だから剣を渡し、向けられる刃は当たり前だと思っていた。
しかし――
『放棄するわ』
寛大なる心で俺を包んでくれた彼女に、全てを曝け出したいと願った。