皇帝陛下、今宵あなたを殺害いたします―復讐するのに溺愛しないでください―【コミカライズ原作】
「じゃぁ、マーシーありがとね」
それからすぐに、馬車は皇城前に到着した。
手を借りて馬車を降りた私は、バッグから出した黒いフェルト製の仮面を顔につけて、マーシーと向かい合う。
「どうしたの?」
仮面の位置調整を行っていると、ブラウンの瞳がじっとこちらに注がれていることに気づいた。
「いや⋯⋯気をつけてね。くれぐれも掟は守らないとだめだよ」
仮面舞踏会の掟。
それは、仮面を絶対にはずさないことと、素性を明かさないことだ。
守らなければならない理由は『会場に入れば、なんとなくわかるよ』と馬車の中でマーシーが曖昧に教えてくれた。
「大丈夫よ。いい大人なんだから」
「だから心配なんだよ⋯⋯」
よくわからない。むしろ落ち込みたいのは私の方だというのに。
腕時計に視線を落とすと、開場までもう10分と差し迫っていた。不安気なマーシーに再び別れを告げそのまま皇城へと向かった。