皇帝陛下、今宵あなたを殺害いたします―復讐するのに溺愛しないでください―【コミカライズ原作】
『お父さま!⋯⋯一体なにがあったの? お父さま!』
必死に呼びかけても、まだ微かに温かいその体はピクリとも反応しなかった。
真っ暗な執務室に充満するのは鉄の香り。
急所を一突きにされた父の身体からは、蛇口を捻ったかのような血液が溢れ出ていて、認めたくないがその命がすでに失われているのは一目瞭然だ。
私は、震える手でその体を抱き寄せ、一刻も早い騎士団の到着を願う。
周辺には、倒れる男が数名。また、数歩離れた先に、赤黒く染まる剣を手にしたまま呆然と立ち尽くす、“彼”の姿がある。
『ルイナード、一体なにがあったの? ⋯⋯なんでこんなことに』
窓の外を見ていた黄金の瞳がゆっくり移動し、今にも錯乱しそうな私を映す。そこで感じたのは違和感だ。
『⋯⋯ルイナード?』
身近な人を亡くしたとは思えない。まるで感情をどこかに置き忘れてきたような眼差しに、得体のしれない不安を感じた。
不気味な静けさに、ぞわりと背筋が冷える。
『――⋯⋯“なんでこんなことになった”、か』
血のついたを剣を鞘に収めた彼は、どこか鼻で笑いながらゆらりと動きだす。
『⋯⋯俺が殺した。ジャドレもこの男たちもな』
想像を絶する告白に、うまく頭が回らなかった。