皇帝陛下、今宵あなたを殺害いたします―復讐するのに溺愛しないでください―【コミカライズ原作】
ホールを包むのは第二幕の先導曲。ワルツ。
穏やかな曲調に合わせて、彼の尖った靴がゆったりとリズムを踏む。しかし、共にリズムを刻まねばならないはずの私は、それと同様に動かすこともままならない。
『どうですか?今宵のお相手に、私などは?』
そう言って、私をダンスホールへと誘い出した彼は、見惚れるくらいの身のこなしだった。
装いや佇まいからして予想ついていたけれど、間違いなく上流階級⋯⋯いや、その中でも上の方の身分に違いない。
「こちらを見て。足はなんとなく合わせれば大丈夫ですから」
「⋯⋯っ」
涼し気な切れ長の目元から連想させる美麗な風貌。漆黒のサラサラした黒髪には天使の輪が乗り、薄いピンクの唇からは白い歯がちらりとのぞく。
思わずクラっとしそうな色気を感じたものの、おそらく私と同年代くらいだと思う。
度々足元のおぼつかない私に、仮面の彼は優しい気遣いを投げてくれる。