皇帝陛下、今宵あなたを殺害いたします―復讐するのに溺愛しないでください―【コミカライズ原作】
ていうか、なんで、いかにもダンスとは無縁そうな私を誘ったのか、疑問でしかない⋯⋯。
幼い頃にお父さまの仕事の兼ね合いで、パーティーに参加したことは何度かある。けれど、ヴァルフィエの女性が社交界でダンスを躍る事ができるのは、十六からだ。
だから、その前に城下町に移住していた私には縁がないわけで。踊れないのも当たり前。
こんなにうまいのなら、ダンスの相手はほかを探してもらった方が⋯⋯
――きゃっ?!
「ほら、余所見しないで下さい」
「っ?!」
彼の革靴をおもいっきり踏んだ挙げ句、転びそうになった私は、腰に回る力強い腕にヒョイと持ち上げられた。
密着した身体の逞しさに、瞬時にカッと頬に熱が集まる。
「っ⋯⋯ごめんなさい」
「あなたが踏んだくらい痛くもありません。私に集中して」
クスっと目尻を落としてたしなめた彼は、私を床へ降ろすと、再びダンスを再開した。
心臓がバカみたいに早い。私どうしちゃったのよ。
甘酸っぱい気持ちを押しこらえながら、ひたすら瞳を縁取る長い睫毛を見ることに専念した。