皇帝陛下、今宵あなたを殺害いたします―復讐するのに溺愛しないでください―【コミカライズ原作】
「そろそろ、休憩しましょうか」
ニ曲目の演奏が終盤を迎えたころ、私の手を引き寄せたタイミングで彼はささやいた。
コクンと了承のサインを送ると、ステップを繰り返しながら華やかなダンスラインから離れ、やがて私の手をとった彼が向かったのは、会場の外へ続く扉だった。
「⋯⋯あの」
「帰りはうちの馬車であなたのことを送らせますので、もう少し私にお付き合い下さい。ここの景色は格別なんです」
そう申し出てくれた彼に、さすがに帰るとは言いだせなかった。判断をこじらせているうちに、ドア横に積まれるブランケットを手にしてた彼は、有無を言う前に私の肩へパサリと乗せる。
「まだ帰しませんよ」
物言いは紳士的なのに、肩に回った手を払うことも、その誘惑に逆うこともできなかった。