皇帝陛下、今宵あなたを殺害いたします―復讐するのに溺愛しないでください―【コミカライズ原作】
「えぇ、一番好きです。心に安らぎをくれますし、しっかり手入れをすれば裏切らないですから」
彼は「そうですか」と納得したように口角を丸め、私たちはゆっくりと園庭の散策を開始する。
「一番好きな種類は?」
今度は歩調を合わせながら、黒い仮面は私を伺う。
「ブルースターです。と言っても、男性に花の種類は、なかなかわからないですよね。小さくてとても可憐な花で、なかでも――」
「知ってますよ」
「へっ?!」
つい男性は花になど興味がない決めつけていた。兄さんがそうだったから。
目をパチクリして彼を振り見ると、彼はなぜか得意げに言葉を続けてみせた。
「男でも多少なりとも花を知っていますよ。あなたほど知識は無いかもしれませんが、ブルースターはこの園庭に一番多く植えられていると言われる花ですから」
少しだけ、目の前の彼に対して警戒心がにじむ。
「⋯⋯城を頻繁に訪れるのですか?」
そんな訝しげな私に対して「おや?」と面白そう声色を上げて、長い腕を組んでみせた彼は、一度その場で立ち止まる。私もつられて足を止めた。