皇帝陛下、今宵あなたを殺害いたします―復讐するのに溺愛しないでください―【コミカライズ原作】
私は早足で彼のもとへ向かい、その手袋の先にある小さなものを覗き込み驚いた。
間違いない。青いブルースターだ。
照らすのはわずかな庭園のライト。それで瞬時に見極めてしまう彼は、花に詳しいのは嘘ではないようだ。
「まさか、ほんとに知ってらっしゃるとは」
「知ってると言ったじゃないですか」
「ひどい方ですね」と笑いながら彼は立ち上がる。ふたりで再びゆったりと歩みを重ね、やがて水路のほとりにあるガゼボへと足を踏み入れた。彼は私を奥へと促す。
周囲にはいくつか人影は見えるものの、外界から遮断されたような空間に少しだけ胸が高鳴る。「どうぞ」と手をひかれ、ベンチにならんで座った。
そこは美しい庭園が一望できる場所だった。
水路に大きな満月がゆらめき、優しい風が草花を愛でる。そして、その懐かしさに、一気に私の心が締め付けられた。