皇帝陛下、今宵あなたを殺害いたします―復讐するのに溺愛しないでください―【コミカライズ原作】
「―――花言葉というものを知っていますか?」
目の前の景色に心奪われていると、斜め上から涼し気な瞳がこちらを見下ろしていることに気づく。艶のある黒髪がサラサラと落ちるさまに目を奪われた。
「花言葉ですか? 多少なりは知っていますが」
「―――では、ブルースターのもうひとつの花言葉は?」
もうひとつ⋯⋯?
つまり、通常の意味ではない事ってこと。
花屋で求められる花言葉の多くは、求婚や婚姻に関する甘い言葉を持つものが主。ふたつに意味を持っていたとこころで、だいたいが良い方の意味では存在を消されてしまうものだ。
私は素直に首を振った。
「『幸せ』や『信頼』といった、通常の意味しか浮かびません。それですか?」
すると、すぐさま「違います」と一蹴される。あまりの即答ぶりにムッと顔をしかめた。
「ではなんですか?」
ぶっきらぼうになった私の物言いにクスっと一笑した彼は背もたれに腕をついて、黒い仮面をこちらに寄せてきた。