皇帝陛下、今宵あなたを殺害いたします―復讐するのに溺愛しないでください―【コミカライズ原作】
「もうひとつの意味は『身を切るような思い』です」
「身を、切る⋯⋯?」
一瞬、息を止めてしまった。
彼の温かい息が耳に触れたから⋯⋯ではない。何となくその言葉は自分を示されているような気がして落ち着かなかったから。
「あなたは、そんな過去があったのでしょうか?」
「⋯⋯なんでそんなこと、聞くんですか?」
平然を装いつつも、ドクン、ドクン⋯⋯と心臓が跳ね上がる。
私のことを知っている、という可能性は低いだろう。おそらく彼は城下町の店先で出会うような身分ではない。だとしたら何? 素性を探っている?
私があからさまに疑心暗鬼の視線向けると、ベンチの背に頬杖をついていた彼は、困ったように苦笑した。
「驚かせたならすみません⋯⋯。はじめて見かけたときから、あなたが悲しそうに見えたので」
悲しそう⋯⋯?
意外な理由に、目をパチパチさせた。
彼はゆっくり身体を起こし、私をその瞳に留めてから口を開く。