皇帝陛下、今宵あなたを殺害いたします―復讐するのに溺愛しないでください―【コミカライズ原作】
「まるで戦場にでもやってきたような硬さと、周りを寄せ付けないような張りつめた雰囲気――。とても強そうなのに、どこか脆い⋯⋯。私はそんなあなたを、守りたいと思い声をかけました」
な、なにを急に……。
カーッと一気に頬が熱くなる。
戦場って言い方は気になるけれど、守りたいだなんて⋯⋯久しぶりに言われた。
心臓を抑えつけながら甘やかに変化したその表情をじっと見つめていると、大きな手がこちらに伸びてきた。
「念の為言いますが⋯⋯これは口説いてますよ」
白い手袋をつけた指先が、こぼれていた髪をするりと耳にかけて離れていく。触れられた瞬間、ぴくんと肩が跳ねそうになった。
いくら浮かない顔の女が気になったからとはいえ、普通、声をかける? 社交界に身を置くのであれば、同じような⋯⋯いえ、それ以上のご令嬢を口説いたほうが得策だ。
検討がつかないまま、その翼のような揺れるまつげを見つめていると――そこで私は気づいた。