皇帝陛下、今宵あなたを殺害いたします―復讐するのに溺愛しないでください―【コミカライズ原作】
重なっていた手が離れ、その手がするりと私のうなじへと触れる。そして、仮面と仮面の距離を詰められた。
「さっき、口説いていると言ったはずです。あなたが今宵、私とに過ごしてくれるのであれば⋯⋯私はその痛みを忘れられそうなのですが?」
涼しげだった漆黒の瞳にちらちらと覗く熱情を感じ、“慰める”の意味を悟った。
目の前が白黒しそうだ。手を払うという判断が思いつかないくらいに。
「――なに言ってるの」
つい口調が素になってしまった。
「言葉通りですよ。それにあなたも⋯⋯なにか忘れたいことがあるはずです。でなければ、あんなこと言うわけがない」
確かにそうだ。彼を『寂しそう』だと言ったのは、もちろん私にも似たようなモノを持ち合わせているからで。言い当て当てられると、声が出ない。
「上書きしたい過去が⋯⋯あるのでは? だとしたら、それは私の手でどうにかしたい」