皇帝陛下、今宵あなたを殺害いたします―復讐するのに溺愛しないでください―【コミカライズ原作】
「アイリス、お前昨日どこに泊まってたんだ⋯⋯? 帰らないから心配したよ」
翌朝、うちへ帰ると、心配していた兄さんと玄関の前で鉢合わせてしまった。
思わず目をオロオロさせてしまう。
舞踏会に行くのが嫌だなんて言っておきながら、知らない男性と一晩を過ごした挙げ句、彼の手配した馬車で帰宅した⋯⋯
なんて言えるわけがない。
悩んだ末『アンナさんのところに泊まったのよ』なんて、わかりきった嘘でごまかし、私は部屋の中へと逃げ込んでしまった。
仮面の彼とは、ホールから伸びる回廊の先にあるゲストルームで一夜を共にした。
そこは、舞踏会の参加者の休憩室として開け放たれているようだが、そのほとんどが男女の密事に使われているとひっそり教えてくれた。
『男を誘惑するなんていけない人だ⋯⋯』
『さいしょに口説いてきたのは、そっちよ⋯⋯』
暗い部屋にもつれ合うようにベッドになだれ込み、仮面をはぎ取った私たちは燻った火種を押し付けるように唇を合わせた。
そして、宣言どおり彼は私の中のルイナードを消してくれた。