皇帝陛下、今宵あなたを殺害いたします―復讐するのに溺愛しないでください―【コミカライズ原作】
纏っていた衣類を剥ぎ落としながら、互いの身体の違いに触れ合い、理性のタガをはずして、ひたすら熱を注ぎあった。そして、はじめての私に気を遣いながらも、彼は貪欲に愛撫を重ね性急に身を沈めては何度も私を揺らした。
この仮面舞踏会という一晩の出会いのもとに成り立った、『なぐさめ』という名の儀式。彼からすれば、一夜限りのお戯れ。
わかっているのに―――止まらない。痛みよりも羞恥よりも、欲する手が止まらなかった。
唯一の胸をしめつけたのは、今朝ベッドで目覚めたときに、すでに彼の姿は無かったことだ。残されていたのは、身体中につけられた紅い華と、彼の身につけていた仮面。そして城の前に帰宅用の馬車が用意されていただけ。
はっきりと顔を見ることは最後まで叶わなかった。
それでも、彼との一夜に後悔はない――。
もう会うことは叶わないが、望んで好意を持った男性に抱かれたのだ。
私は、過去に心を痛めることなく前に進んでいける。
そう確信していた。