皇帝陛下、今宵あなたを殺害いたします―復讐するのに溺愛しないでください―【コミカライズ原作】

「しばらくは無理のないように生活をしたほうがいい。妊娠中は体も疲れやすいし、悪阻だけでなく今回みたいに貧血を起こすこともある。できれば仕事はしばらく休んだほうがいいだろう」

「休む⋯⋯んですか?」


そこで、思わぬ情報にオウム返ししてしまった。

兄さんだけではなく、アンナさんにも迷惑をかけてしまうという申し訳無さが浮上してしまったから。

妊娠しているという実感すらままならない中、病気でもないというのに。休んでいいのだろうか。

そんな不安に駆られていると、医師は安心させるようにシワだらけの顔で優しく笑いかけてくれた。


「もう、アイリスちゃんだけの身体ではないんだよ。お腹の中には、小さな命が宿っている。仕事中に倒れたら大変だろう? ――なにせ、赤ちゃんがいるんだから」


赤ちゃん⋯⋯。


自然と手をお腹へと伸ばしていた。

改めて言われると不思議な感覚。


だけど、私は知らない男性の子供を身籠ったというのに、自分でも驚くほど冷静だった。

まるでこれが当然な流れであるかのように、心はすんなりと妊娠という事実を受け入れている。


それが、なぜなのか――

うん。わかってる。

私はあの一夜で、どうしようもなく彼という人に恋をしていたんだ⋯⋯。

このひと月いい思い出だと言い聞かせながらも、恋焦がれるように、なんども仮面に隠れた美しいあの人を思い返していた。

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