皇帝陛下、今宵あなたを殺害いたします―復讐するのに溺愛しないでください―【コミカライズ原作】
ひとりきりになった私は、ゴロンと寝そべりぼんやりと天井を見上げた。
先生の話しだと、この子が生まれるのは、冬の頃――城で聖夜祭が行われる頃だと言っていた。
まだ7ヶ月以上も先だけれど、きっと時間はあっという間に過ぎてしまう。体調が落ち着いたら、ここを出ることも含めてきちんと、考えなければならない。
兄さんはとても頼もしい言葉をかけてくれたけれど、自らの過ちに頼りきるような真似はしたくない。
この子は私と――彼の子供だから。
まっ平らなお腹へ再び手を伸ばす。
“彼”は、戯れの一夜で私が身籠ったことを知ったらどう思うのだろうか。
仮面舞踏会の翌朝、朝日に照らされた素顔を目にすることも叶わなかった――愛しい人。
あったのは、すでに冷たくなったシーツに、ベッドの下に散らばる自らのドレス。そして、“馬車を城門へ用意してある”とだけ書き残された、質素な置き手紙。
お遊びだということはわかっていたはずなのに、胸が切り裂かれたように痛み、言いようのない孤独感に胸が支配された。
だというのに――懲りない私は、一瞬だけ夢を抱いてしまったの。
笑顔を交わし、その腕に小さな子供を抱いている『家族』の姿。
――この状況で何を夢見てるのかしら。
能天気な自分を鼻で笑い、すぐさまそんな思考は取りやめた。
お父さまは、こんな私を見て呆れてしまうだろうか。