皇帝陛下、今宵あなたを殺害いたします―復讐するのに溺愛しないでください―【コミカライズ原作】

そして、どのくらい時間が経過しただろう。

これから先のことについて悶々考えていたが、兄さんは一向に戻ってくる気配がない。

部屋の古びた時計を見やれば、すでに三十分は経過している。

見送りにでかけたはずなのに、一体どこまで行ったんだろう?

気になりつつも、体調も万全でないことから寝支度を整えていると――

なにやら外が騒がしいことに気付いた。

男性が怒っているような声と、馬車の音がかすかに聞こえてくる。

こんな時間にどこかに来客? そう思い、おそるおそる窓を覗こうとしたそのとき。

突如、大きな足音と口論するような声が家の中へ入ってきた。

なにっ⋯⋯?!

ベッドの上で恐怖のあまり硬直していると、物音はどんどんこちらへと近づき、やがてバンッ!!と荒々しく部屋の扉が開かれた。


「――失礼する」


ズカズカ踏み入ってきたのは、見知らぬ長身の男。あとに続いて飛び込んできた兄さんが、慌てて私と男の間に立ちはだかる。


「カ、カルムさん、困ります! だからいきなりはちょっと⋯⋯! 俺も混乱してて」

「どけ、レイニー。上司命令だ」

「な、なんなの⋯⋯」


そばにあった毛布で寝間着を隠しベッドの端へと後退した。

混乱する私をよそに、兄さんを押し退けた男は迫ってくるなり私を見下ろす。
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