皇帝陛下、今宵あなたを殺害いたします―復讐するのに溺愛しないでください―【コミカライズ原作】
短く切りそろえられた、燃えるような赤毛。線を伸ばしたかのような悪い目つき。割と整った面立ちだけれど、不愉快極まりないといった風にキツく眉を寄せられている。
そして、彼の着ている衣装は、兄さんがいつも着ているダブルボタンの漆黒の軍服――帝国騎士団のものだ。
味方なのよね⋯⋯? 警戒しているとその命令はいきなり飛んできた。
「アイリス=ロルシエ⋯⋯ルイナード陛下がお呼びだ。城まできてもらう」
――⋯⋯ルイナードが?
唐突なそれに絶句していると「ちょっと待って下さい」と男の肩を掴んだ兄さんが、次の瞬間には床へと転がされていた。
通常ならその光景に驚くだろう。しかし、今の私はそれを心配する心の余裕なんて全くなかった。
息が止まる思いだった。
ルイナードが呼んでいる⋯⋯? なんで今更あの男がでてくるの?
理解不能な事態に、じわりと背中に冷気が走る。
「どういうこと⋯⋯?」
「説明は着いてからだ、早くいくぞ。陛下が待っている」
話しについていけない。
なぜこのタイミングで? さっき見た夢はこれを示唆していたというの?